
咳について
シンガポール診療所に赴任して以来、から咳に対しての治療が少し多いような気がします。一つには冷房を一日中きかしているためエアコンのフィルターに付着したゴミが室内にばらまかれるためや、その冷気、乾燥によるものが考えられます。またこの地域独特のヘイズと呼ばれる細かい粒子による刺激も季節的には考えられます。今回から何回かに分けて咳についてのお話しをしたいと思います。
まず始めに咳はどういう時に出るのでしょうか。咳は大きく分けて、痰を伴う咳(湿性の咳)と、痰を伴わない咳(乾性の咳)の2つに分けられます。痰を伴う咳の方は肺炎や気管支炎等を考えて下さい。この時は痰が気道の中にあるため、体が反応してそれを外に出そうとする生理的な反射です。一方、痰を伴わない咳は咳だけがでて苦痛となるものです。前者は原因となる炎症を止める事が治療となります。つまり、抗生物質等で炎症の原因となる細菌を死滅させることが有効となり、闇雲に咳止めを使用することはお勧めできません。後者は咳だけの問題であり、直接咳止めを使用すべき状態と考えられます。
では、乾性の咳はどのようなメカニズムで出るのでしょうか。咳は複雑なメカニズムにより発生しますがここでは単純に2つの要因から考えてみましょう。
その1つが、咳受容体の感受性の亢進です。咳受容体は気道には存在して、直接、間接に刺激され脳に信号を送ります。そして咳をするように命令します。この感受性が亢進していると通常では反応しないような僅かな刺激、吸った空気の温度変化や弱い刺激物質(たばこの煙や線香の煙等)に必要以上に反応して咳が出る事になります。この咳受容体の感受性は正常でも男性より女性、女性でも閉経後に感受性が亢進するといわれています。実際閉経後の女性に長く続く咳が多いようです。
しかし不思議な事に喘息ではこの咳受容体の感受性は健康な人と比べて違いが無いと言われています。これは次回お話する、もう一つの要素が原因だからです。
日本人会診療所
吉田泰司
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