リム保健賞大臣が4月8日外国人社会の代表者を集めてSARSについての説明会を行った。下記はその際に配布された資料を和訳したものである。英語の原文が御入用のの方は日本人会フロントオフィスまでまで御連絡下さい。

シンガポールにおける重症急性呼吸器症候群(SARS)

シンガポールにおけるSARSの現状

シンガポールは2003年3月13日3人のSARS感染患者が報告されて以来、4月4日現在101件のSARS感染患者が報告されている。その内69人は回復し退院した。未だに26人が入院しており、12人は重症である。6人のSARS患者が死亡した。101件のSARSケースの内、7人が輸入感染者で、46人は医療関係者、48人は最初の患者に接触のあった家族、友人等であった。45人がSARSの疑いがかけられており、その内3人は18才以下の子供である。

 

SARSに関わる現状知識

Sarsは新しい型の感染病で、認識されてからまだ1ヶ月にも満たない。約1ヶ月の間にSARSの特徴が随分と判ってきた。しかし未だに判らない部分も多い。

 

先ず、感染の原因が判っていない。WHOと米国のCDC(Centres for Disease Control)は感染はコロナウイルスの仲間のウイルスによるものではないか報告している。コロナウイルスは風邪の原因として知られるウイルスの1つである。しかしSARSの原因とされるウイルスはどの既知のウイルスとも異なっている。多分新しい型のコロナウイルスと見られる。

 

SARSの診断キッドは無い。人間に感染する時ウイルスの特性、作用についても不明である。しかし今まで判っているコロナウイルスの仲間に関わる情報からはこのウイルスは自然環境に中では3時間もすると消滅してしまうと考えられる。

 

2番目にSARSの潜伏期間は2日から10日間と言われている。ほとんどの場合、潜伏期間は3日から7日間である。この情報が接触経路の調査や隔離期間の決定するのに役立っている。

 

3番目に、100件以上の我々の経験、他国での経験から、どのようにこの病気が進行していくか判ってきた。初期の症状は突然の高熱、そして患者によっては悪寒、咳、頭痛を伴う。3日から7日経過すると咳と呼吸困難が始まる。更に3,4日後、レントゲンで肺炎の症状が見られる。約90%は徐々に回復する。しかし、10%から15%は肺炎が進行し、ICU(集中治療)の治療が必要になり、4から5%が死に至る

 

4番目に、SARSは発熱や咳という症状が現れた時に感染力を持つというのが医療仲間での共通認識である。我々の経験から、SARS患者の病気が進行すればするほど、感染力を増すようだ。シンガポールにおけるSARS患者のほとんどは極限られた者にしか病気を移していない。それも緊密な接触を持った者にである。また、数人だか高い感染力を持つ患者がいる。多くの人に病気を移してしまう患者が存在する。当初SARSを持ち込んだ3人の患者が今までに91人の人にうつしてしまった(super spreaderと呼ぶ)。

 

SARSは主には飛沫を通じて感染すると信じられている。咳やくしゃみで排出されたウイルスを含んだ空気を吸い込んで感染している。我々も経験からこの意見と同じである。長い時間SARS患者と緊密な接触をしている医療従事者、家族、見舞いに来た友人等が罹患している。

 

僅かだが空気感染の可能性もある。空気感染はウイルスが長い時間空中に漂い、従って遠距離の多く人にも感染することを意味する。例えば、SARS患者と同じ部屋、同じ飛行機にいることによって感染することを意味する。今までのところこうしたケースは見られない。SARSの病人と同じ飛行機で旅行をした数千人の乗客をドイツ、カナダ、シンガポール、米国で調べたがSARSは見つからなかった。我々が知っている限りでは1人だけSARSにかかった乗客乗務員がいた。その乗務員は搭乗したSARS患者の世話をしていた。

 

SARSが特定の別の感染経路を通じて、より強い感染力を持つ状況がある可能性を排除できない。3月31日に報告された香港のアパートで起きた多数の感染者、ホテルのメトロポールホテルの宿泊した者数人の感染者がその良い例だ。このことはSARSが汚染された物を通じて広範囲に感染する可能性があることを物語っている。

 

SARSの特別は治療法はまだ無い。集中的な対症療法的な治療のほかに良い方法は今のところ無い。この治療方法で80〜90%のSARS患者は合併症も無く回復している。残念ながら4〜5%の患者がこうした治療を受けているにも係わらず死亡している。患者からの血清による治療は未だに検証中である。

 

シンガポールにおけるSARS対応策

シンガポールでのSARS対策は、保健省が次の方法を実行している。

 

1、       早期発見

SARSの疑いのあるケースを早期に発見し、早期に治療と隔離を行う。

もし症状が進行したら、それを発見し直ぐに治療を受ける様にアドバイスしている。伝播確認地域への旅行歴、或いはSARS患者との緊密な接触があった場合のみ、SARSにかかる怖れがあると市民に理解させるよう務めている。

 

医者と病院に対する最新情報の提供を行なっている。

 

接触経路通じて、SARS患者の早期発見を行っている。

 

2、感染経路と自宅隔離

SARS患者が発見されると、保健省(MOH)は感染経路を調査し、自宅隔離をして、接触を封じ込める。隔離された者は毎日検温することが指示される。病状が思わしくない場合にはMOHに連絡する。MOHは毎日チェックし、早期に病状の思わしくない者を発見し、隔離方法をとる。このことによって入院することの遅れから病気の拡散することがない様に予防している。

 

感染経路の特定は完全には出来ない。接触した者を全て突き止めるすることは出来ない。発熱を伴った病気にかかっていたら、SARS患者に接触していたら、職場に行かない様に、学校に行かない様に、そして直ぐに医者に行くようにシンガポール人に訴えている。

 

3、             患者の隔離

SARSの感染を広げないため、SARSの疑いのある患者は1箇所に集め、タントクセン・伝染病センターで治療している。こうした患者は厳格な伝染予防法の下で隔離した病室で治療を施している。

 

4、             病院での感染予防策

SARSの特徴は、この患者の治療に当った時に適正な予防策を取っていなかった医療関係者が急速に感染してしまったことにある。病院関係者はSARSの疑いのある患者に接する時には感染予防策をきちっと取らなければならない。予防策とは顔にフィットするマスク、ガウン、グローブの着用、念入りな手洗いである。スタッフは就業時間3回検温している。一旦異常が認められと、医療従事者は直ちに隔離される。SARSの治療に当っている医療スタッフが他の患者を診ることは無い。

タントクセン病院と伝染病センターに加えて、全ての病院の医療スタッフも発熱患者、肺炎患者に対応する際には必要な予防策を実行している。SARSの疑いのある発熱患者が来院した際には他の患者と隔離して、対応することになっている。

 

5、             空港での検査

海外から持ち込まれるケースを減少させるため、チャンギ空港、クルーズセンターでは伝播確認地域から入国する乗客の健康スクリーニングを行っている。航空会社がチックインカウンターで行っているチェック、乗務員が飛行機の中で行っているチェックを補完している。シンガポールに入国してくる旅行者には健康管理警告書を出して、SARSの症状、罹患した時の対応策を説明している。入国する旅行者には直ぐに健康状態報告カードを記入してもらうことになっている。

 

6、             ガイドライン

SARSに関わる注意書を病院、医療スタッフ、空港、港湾施設、学校、職場、旅行会社等には配布した。この注意書にはSARSの症状予防法について説明している。

 

7、             市民教育プログラム

保健省はメディアを通じて、SARSに関わる集中的な市民教育を行っている。SARSの情報は4つの公用語で新聞でも報じている。

市民から寄せられる質問を受けるインタビューにも保健省のスタッフがラジオで応えている。ポスター、パンフレットも4つの言語で配布している。

 

8、             公共乗り物の保護

SARSの市民への広がりを最小限に抑えるため、救急車で運ばれるSARS罹患の可能性のある者を4つのグループに分けている。

1)           SARS症状のでた自宅隔離令の出ている者

2)           開業医に疑いがあると認められたケース

3)           渡航注意書を受取った入国者で後にSARSの症状が見られる者

4)           チャンギ空港、シンガポールクルーズセンターでSARSを認められた者

上記の場合、保健省は救急車を手配し、タントクセン病院に送り、検査を行う。

 

シンガポールのSARSの現状

市民教育、予防、社会的責任感がSARSの感染を抑え込む鍵を握っているとシンガポールは信じている。シンガポールはSARSを早期に発見し、患者を隔離して、接触を防ぐなど具体的な方策を導入する一方、一般市民が社会的責任感を持ち、警戒をし、発熱を伴った不調を感じた時には医者にかかることが出来れば、SARS問題は封じ込めることが出来る。SARSに関わる市民教育は日常生活を送っていく上で、極めて大事である。

 

前進

シンガポールはSARS発生問題をコントロールできる。この病気は徐々に抑え込まれて行く。しかしこの後SARSが消えて無くなる事はない。この問題が長引くことの準備をしておかなければならない。世界中で人が行き来をしており、新しく病気が持ち込まれることは将来あり得る。旅行者のチェックには効果に限りがある。チェックの時には正常で、後でSARSの症状が出てくることもあり得る。1件のSARS患者の侵入によって多くの者が感染することもあり得る。次に発生した時の備えをしなければならない。

 

SARSの対応は保健省だけの任務ではない。みんながそれぞれの役割を果たしていかなければならない。考え方や社会活動を変えなければならない。旅行の注意事項を守り、伝播確認地域には旅行しない。もし発熱し、不調を感じたら、職場に行かない、子供を学校に行かせない。医者に診てもらい、良くなるまで、自宅にいる。良い衛生状態を保つ。公益のために政府と協力してシンガポールにおけるSARSの予防、封じ込めに立ち向かわなければならない。