
医師 小川原 純子
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~落ち着かない子ども達と慌てん坊の大人達~ |
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「うちの子、全然集中して宿題やらないのよ。すぐ、他のことが気になっちゃって…。本当に、落ち着きがないんだから」というお母さんの愚痴はよく耳にします。「分かる。うちの子も同じよ」多くのご家庭が、このような悩みを抱えているものです。子どもの集中力は、年齢と共に成長していきますが、同年齢の子ども達に比べて、特に「集中力にばらつきがあり、注意が他に逸れ易い」子ども達に、最近注目が集まっています。 はっきりと「多動」の傾向があり、授業中ジッと座っていられない、終始活動的で落ち着いて課題に取り組めない等、顕著な問題行動があれば、家庭や学校でも早期に気付かれ、診断を受けることもあるでしょう。 ところが、授業中立ち歩く程ではないけれど、こういった問題を軽度に抱えている子ども達もいます。「快活でなかなかのアイディアマン」、「積極的に発言し、恥ずかしがらない子」、「あまりくよくよ失敗を引きずらず、思ったとおりに自分を表現する純粋な子」、「天真爛漫」など、長所として評価されることもありますが、実際に注意してみると以下のような特徴があります。 ・ 順番を待てずに、思いついたことをストレートに発言してしまう ・ 気になる物に、さっと手が伸びてしまう ・ 目の前の授業に集中せずに、気になったことに思考が勝手に移ってしまう ・ 空想好き ・ 授業中、ノートがきちんと取りきれない。落書きが多い ・ 「好きなこと」には集中し、かなりの実力を発揮するが、「やらなくてはならない事」に取り掛かることが難しい ・ 真剣にやれば出来るのに、なかなか真剣に取り組まない ・ ひどく注意されたのに、すぐに同じ間違いをしてしまう ・ 怒られたことをすぐに忘れ、気にしていないように見える ・ 片付けが出来ない ・ 忘れ物が多い こういった行動特徴が、場所を選ばずに見られる時には注意が必要です。学校ではとても良い子できちんと先生の指示が入るのに、家庭では全く親の期待通りに動かない子ども達もいます。子ども達は、「甘えの天才」 。だから、家庭学習・家庭生活だけでは、子どもの状況を正確に判断することができないものです。実際に、子どもを評価するには、学校や塾・習い事の先生に、「同じ年齢の子ども達と比較して」客観的に評価してもらうことが大変参考になります。 |
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大人のADDその1 今日の本題はここからです。実は、極軽度のADD傾向があって、今まで指摘を受けることなく大人になっている人たちもいます。中には、とても優秀な人やアイディアや発想力が豊かで社会的に成功している人も少なくありません。 一方で、とても苦労している人もいます。機転や発想は良いのだけれど、雑多な事務処理・片付け・整理整頓・家事がとても苦手で、日々の生活を「自分にがっかりしながら」過ごしている人たちです。 |
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例:ご主人に「だらしない」と言われてしまうAさん (31歳・女性) Aさんは、とても明るく人付き合いの上手な女性です。生来くよくよ考えず、多少の失敗をしても「まあ、そういう事もあるか!」と、気分の切り替えが早いことが自分の長所であると思っていました。 ところが、結婚して退職。ご主人と共にシンガポールに赴任し、主婦として腕を振るうことになりました。Aさんは機転が利きすぎてしまいます。電話に出て話していると、近くに置いてある手紙に気付きました。電話を切ると、早速手紙を開けようと、はさみを取りに行きます。はさみ置き場の近くに昨日使った鞄が置いてあったので、レシートを整理しようと手紙とはさみを置いてレシート整理に取り掛かりました。レシートの中から、クリーニングの引換券が出てきました。「そうだ、今日受け取りに行きたいから、主人の汚れたズボンをまとめてしまおう!」と寝室に向かいます。ズボンをまとめていると携帯電話が鳴って、友人から送別会の連絡が入り、色々な相談をしているうちに新しい仕事が増えてしまいました。 Aさんは決して、不真面目に生活しているわけではありません。人一倍努力しているのですが、一つ一つの用事が完結しないのです。一日努力してたくさんのことを手掛けましたが、完全にきちんと終了するものが少ないのです。だから、Aさんは努力をしているのに、ご主人から「君はだらしないね。いったい日中、何しているの?」と言われてしまいます。他の奥さんが軽々とこなしている事なのに、自分は何故できないのか。最近は、自分が情けなく自信喪失中です。 |
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例:アイディアはあるけれど持続力のないBさん (30歳・男性)Bさんは、大学時代にはサークルのリーダーをするほど活発で、話し上手、仕切り上手です。皆が喜ぶような企画なども、労を惜しまず提案・実行するなかなかの活動家です。学力的にも優秀な方です。Bさん自身も、自分の性格に自信を持っていました。昨年から、シンガポール支社(日本人2名)に赴任になり、事務処理・連絡など細々とした雑用全般をこなし、自分で判断しながら上司をサポートすることを期待されています。ところが、来星4ヶ月目位から、「期待される役割」を十分にこなせていないことに自分でも気付き始めました。 大学時代や東京本社で勤務していた頃のBさんは、その人柄から友人に恵まれ、さりげないサポートを得ていたのです。もちろん、友人がBさんの仕事を直接手伝うわけではありません。「今日は、○○会議だろ。昼飯は、簡単に済まそうぜ」友人のこんな一言が、Bさんの集中を一点に絞り、段取り良く仕事をこなすリズムを作っていました。 ところが、シンガポールでは集中が一点に絞れません。山のような事務処理を前に、「そうだ、これは今日中にやろう。あれも、なるべく早くやらなくちゃ」とあっちもこっちも頭の中は大忙しになるばかりで、能率は全く上がりません。そして、そのうち疲れきって、仕事に集中できなくなってしまうのです。 上司からは「要領が悪い」、「もっと真剣に仕事と向き合え!」と喝を入れられ、自分でもこの1年間何度も心を入れ替え、「仕事に専念しよう」と決意しますが、数日努力すると頭が疲労し、集中が切れてしまいます。特に上司が不在の時には、一向に仕事がはかどりません。夕方になると、自分が今日一日で何も達成していないことに気付き、自分自身にがっかりしたり、あせったり。だから、毎日遅くまで残業することになってしまうのです。最近では、「自分にはこの仕事が合っていないのでは?」という疑問や「上司との相性」まで考え込んでしまいます。 |
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大人のADDは、重症な疾患ではありません。ですが、日々の生活の中では深刻な問題です。こういったADDの傾向を持つ人は、決して稀ではないのです。本人はもちろん、周囲にいる人たちもその特徴を知らなければ、「要領が悪い」、「真剣さがたりない」、「怠けている」と感じ、必要以上にイライラしたり叱責したりして人間関係に葛藤を引き起こします。とにかく、多くの人に「ADD:注意欠陥性障害」がどんな状態なのか、知っていただくこと、認知していただくことが大切です。 (次回に続く) |
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●筆者紹介(おがわら・じゅんこ)
東京医科歯科大学医学部卒業 、東京医科歯科大学第一内科所属
国家公務員共済組合、九段坂病院にて心療内科
日本内科学会認定内科認定医 、日本心身医学会会員
2001年4月より現職