
医師 小川原 純子
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海外での子育てとお父さん 「パタニティーブルー 家族に子供が生まれた!」 周囲の人、それこそ挨拶くらいしかしない近所の人にまで最大級の祝福をしてもらい、「おめでとうございます。目元がお父さんにそっくり」等と言われると、お父さんもまんざらでもない気持ちになります。 寝ている時は天使のような赤ちゃんですが、一度騒ぎ出すと、これが結構な曲者です。親は、自分が集中していたことをすべて放り出して対応に追われます。今までだったら、ゆっくりコンピューターをしている時間・雑誌を読んでいる時間・ビデオを観ている時間だったのに、作業はすべて中断です。母親の場合には、しばしば、食事の中断・睡眠の中断・シャワーの中断など、生活リズムの中心部分をすっかり狂わされてしまいます。「それが母親ってものでしょう」と言われてしまいそうですが、半年も1年も自分のペースがない生活を強いられれば、これは、心身ともに大変な負担です。 幸せなはずのお母さんが、出産後、気分が落ち込んだり、必要以上に負担を感じたりして、精神的に追い込まれてしまう状態をマタニティーブルーと言います。出産時の大きなホルモン変化も加わって、マタニティーブルーを経験するお母さんは、少なくはありません。 これと同じように、赤ちゃんを迎えたあと、お父さんの体調や気分に異変が生じることもあります。シンガポール日本人会診療所でも、こんなお父さんにたくさん出会います。これが、パタニティーブルーと言われるものです。 大人の生活ペースが崩れ、マイペースな時間の減少、家庭で期待される役割の急増、奥さんが子供に過集中、子供が誕生したことで生じる「親戚間のやり取りやバランス・葛藤」「両家の間に立たされて、夫婦間のいさかい」など要因は複数です。とにかく、赤ちゃんという存在は魅力的で、家族に喜びを運んできますが、同時に、今まで存在していたバランスを崩す強大な力の持ち主なのです。 シンガポールでは、真面目なお父さんが陥りやすいもう一つのパターンがあります。 |
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「子供だけが・・・」症候群 20代後半・30代前半の若いお父さんは、職場では、多忙に追われている世代です。そして、新しい家族を迎える年頃です。仕事上、自由に仕事を組んだり、時間を調整したりすることはなかなか出来ません。日中はデスクワークで、シンガポールでの交友関係が広がることは無く、夜やっと仕事が終わると、20分もあれば自宅に到着してしまいます。趣味を広げる時間も、気分を転換する時間もありません。 「『パパ』と迎えてくれる子供だけが、唯一の癒し・心の支え」という生活パターンのお父さんは、少なくないことでしょう。ですがこの生活、意外と疲労感が溜まりやすいものなのです。 生活の柱が「職場と家庭」だけになり、単調・刺激の欠如。そして、片方でトラブルを抱えた時に、発散場所の欠如。こうなってくると、関係が緊密すぎて、家族に些細なことでイライラをぶつけてしまう状況も生じかねません。 「お父さん、こちらでの友人関係は充実していますか?」「この人と飲みに行くと、すっきりするという仲間がいますか?」「スポーツ・趣味など、『週末の自分の楽しみ』を持っていますか?」「日本の友人の来星・自分の旅行・同窓会など、今後半年以内に楽しみがありますか?」実は、こういったことをシンガポールで持つことは簡単ではありません。海外出張・日本出張があるお父さんの場合には、これらを上手に利用して気晴らししている方もある様です。 さて、皆さんのお宅ではいかがですか? |
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「奥さんが足を引っ張る?」 「私が一日中、子育てをしているのだから、一刻も早く帰って、子供の世話をしてちょうだい」「あなただけが、気晴らしされては困ります。家族全員で、行動しましょう」お母さん業というのは、実は、拘束時間が長く、根気の要る大変な仕事です。だからつい、「自分が大変なことを、あなたにだけでもわかって欲しい」という気持ちがこんな言葉になっていませんか?ですが、24時間365日、こんな言葉でご主人を縛ることはやめましょう。 週末、2?3時間は解放してあげるのも、お互いのために良いことかもしれません。「家族が密着しているから、上手くいっている」とは、限らないのです。 そして、適当なタイミングで、自分も自由にさせてもらいましょう。「give and take」でお互いに感謝しながら生活できたら、生活がもっとスムーズになるかもしれません。 |
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●筆者紹介(おがわら・じゅんこ)
東京医科歯科大学医学部卒業 、東京医科歯科大学第一内科所属
国家公務員共済組合、九段坂病院にて心療内科
日本内科学会認定内科認定医 、日本心身医学会会員
2001年4月より現職