食事 / 運動について

医師 小川原 純子

 2005年は心療内科の活動において、大きな転換期となりました。毎年、心療内科を受診する大人が増加する中で、「海外で成長する子供たちのこころと発達」に目を向けた一年だったからです。

 今年は、海外医療基金財団の協力で、日本から海外医療に関心の高い「小児発達の専門の医師」に2度シンガポールを訪問して頂く事を実現しました。1番に驚いたのはその人選。海外医療基金財団の人脈で、東京の第一線で活躍されている医師が来星してくださったことに深く感謝しております。日本で外来予約を取れば「2ヶ月待ち」という医師に、個別相談会をやっていただけたことは非常に有益でした。今まで、「あいまいな状態」で置かれていた子供たちに、キチンとした診断を。そして、心配で不安になっていた親御さんたちに正確な情報を。

 こんなケースがありました。2歳半の男の子を持つお母さんが初めて相談にみえました。お母さんの心配事は「長男が多動ではないか?」ということでした。専門医の診断は、「お兄ちゃんは正常発達の範囲内です」とのこと。お母さんは喜んで帰られましたが、後日、再び心療内科の外来へ。お母さん曰く、「この子が正常なのに、どうして、私は子育てにこんなに『疲労感』を感じてしまうのでしょう?」。色々と診察を重ねるうちに、お母さんは中等度の鉄欠乏性貧血と診断されました。「私が、貧血で息切れしてしまうから、子育てが大変だったのですね」と、お母さんも医師も納得となったわけです。

  2005年度のこども健康相談を通して、感じた想いを率直に書きます。

 まず、「正確な診断・最新情報は子供たちのこれからに不可欠である」。今まで、心療内科で何とか大きくは把握してきましたが、それだけでは何も役立たないのです。先のケースの様に、日頃から子供たちをたくさん診察している医師に「正常範囲」「要経過観察」「要治療」とキチンとしたアドバイスを頂くことで、子供も親も問題が明確化することもあるからです。

 そしてもう一つ、「1回の専門医相談だけでは意味がない」。これも正直な感想です。担当した専門家は数日で帰国してしまいますが、当地で生活する私たちは、ここで子供たちのために何かを見つけ、生活してゆかなければならないのです。専門医の指示を受け、半年の間、子供たちを見守ることが心療内科やこの地のメンタルヘルス従事者の役割として期待されることでしょう。

 講演会を開催することで、日本の資格を持つ心理療法士・言語聴覚士・社会福祉士など複数の方々と繋がりをつくる機会を頂きました。今はまだ「細い繋がり」ですが、ゆっくりと子供を支える大きな仕組みを作り上げてゆくことが、今後の我々の課題です。また、当地の専門医との連携は将来的課題でしょう。

 当地の日本人幼稚園・日本人小学校・日本人中学校の先生方、また、その他の幼児教育機関の教育者の関心が非常に高かかったことも、印象的でした。

 シンガポールは、国土が狭く、窮屈にも感じますが、これを「連携に好ましい状況」に変えてゆけると良いですね。

 心療内科本来の役割をきちんとこなしながら、子供たちの成長をサポートできるそんな役割を2006年度も目指してゆきたいと考えています。

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●筆者紹介(おがわら・じゅんこ)

東京医科歯科大学医学部卒業東京医科歯科大学第一内科所属

国家公務員共済組合九段坂病院にて心療内科

日本内科学会認定内科認定医日本心身医学会会員

2001年4月より現職