
医師 小川原 純子
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夏休みを頂き、日本に一時帰国していたときのことです。親類の60代後半の男性に「心療内科で話をすると、それだけで病気は良くなるものかね~?」と質問されました。「お話を聞く科=心療内科」となっていたことにびっくり仰天。でも、精神神経科・神経内科・心療内科・脳神経科、こんなにたくさんある診療科の違いがすぐに分かる方が、どれ位あるでしょうか? |
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「心療内科」では、「自分の訴えをよく聞いてもらえる」という好印象を頂いていることは、大変好ましいことです。患者さんの話を伺いながら、医師の頭は、ぐるぐると回っています。患者さんの訴えを、いくつかの分野に分類します。そして、それらの訴えと、各疾患の診断基準とを順繰りに照らし合わせていきます。 この一方で、「一体この患者さんの脳細胞機能・自律神経機能のどこに不調がきているのか?」「脳内伝達物質のセロトニンが欠乏しているのか?それとも、ドーパミン系の不調なのか?」患者さんの本来健康な体調のどこがアンバランスになっているかを、分析し、治療方法を検討していきます。 |
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現在の医学では、採血をしても、脳のMRIやCT検査をしても、この機能異常を正確に把握することはできません。だから、患者さんの訴えを丁寧に聴かせていただくことが、貴重な判断の材料になるわけです。 ただし、患者さんの話を共感し同調するだけでは決して体調は改善しません。そこに、医学的・心理学的分析を加えていくことが非常に重要になっていくのです。 |
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将来の医学では、何らかの検査で「Aさんの不調は、前頭葉のセロトニンが50%低下しているからですね」などもっと具体的に異常を指摘できるようになるでしょう。そうなれば、もっと周囲と病気を理解し合えたり、話し合えたりしやすくなるでしょうね。そんな日を心待ちにしています。 |
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患者さんから「心療内科受診は敷居が高い」「今日、こちらに伺ったことは、家族にも内緒にしたい」「待合室で友人に会うのでは…とドキドキした」と言われることが少なくありません。海外で生活するということは、どんな健康な人でも自律神経のバランスを崩しやすいものなのに、外来受診への抵抗感が相談のタイミングをどんどん遅らせる悪循環になっていることは、残念なことです。 |
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<夫や妻に受診を勧めたい> A男さんは、家族と共にこの4月に来星されました。仕事上の責任が増大し、加えて、英語で指示を出す環境・日本側と現地の板ばさみで、仕事上とてもつらい立場にありました。帰宅時には、ため息の連続、毎朝出社するのに落ち着かず、何度もトイレに通います。一方で、家族に対して今までになかったイライラを見せるようになって来ました。奥さんが「子どもの大事な相談事」と持ちかけても、返事は投げやりで、少々奥さんが反対意見を述べれば「もう分かった。そんなに心配ならお前の好きにすれば」と言われてしまいます。 4ヶ月間、我慢しましたがとうとう奥さんが「あなた最近、イライラして変よ。仕事が大変すぎるんじゃない。心療内科に相談に行こう」と持ちかけました。すると、ご主人は激怒。「お前は俺を病気にしたいのか?」「そんなに俺と居るのがいやなら、お前は日本に帰れ!」と話になりません。 |
| こういうケースは、実は少なくないのです。シンガポールは比較的生活しやすい海外ではありますが、それでも夫婦・家族が何の努力もなしに最初から快適に生活できるわけではありません。来星当初の衝突が、ずっと尾を引き、夫婦や家族の間に大きな溝・傷を残してしまうこともあります。自律神経の異常も他の病気と同様で、事前に病気の知識・対応法を知っておくことは、とても大切です。赴任前の企業での教育の重要性を痛感しています。 |
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●筆者紹介(おがわら・じゅんこ)
東京医科歯科大学医学部卒業 、東京医科歯科大学第一内科所属
国家公務員共済組合、九段坂病院にて心療内科
日本内科学会認定内科認定医 、日本心身医学会会員
2001年4月より現職