<近視について 後編>
前回は、近視にはその原因から屈折性近視と軸性近視があること、そしてその多くは後者であること、近視かどうかは多くの場合眼の構造に起因し、子供のうちは調節力でそれがカバーされていることなどをお話ししました。今回は近視の場合どう対処すべきかをお話しします。
まず、近視を「矯正する」と「治す」とでは意味が違います。
矯正にはメガネ、コンタクトレンズ、外科的手術が挙げられますが、あくまでも眼の近視の状態はそのままで、何らかの方法で屈折を矯正する方法です。話題になっているレーザーによる近視手術も、角膜を削り取って屈折度を矯正しているに過ぎず、治している訳ではないのです。
「治す」とは根本的に近視の原因を取り除くことになるのですが、残念ながらわずかな例外を除いて治すことは出来ません。わずかな例外とは 、俗に言う仮性近視(屈折性近視)のことです。
学校健診などで視力の低下を指摘されたり、日常生活で視力の低下に気づいたら、まずは眼科医の診察を受けて原因を明らかにすることをおすすめします。
前回ふれたように、眼科では調節麻痺剤と呼ばれる目薬を使って、軸性近視か仮性近視かを調べることができ、また調節麻痺剤は仮性近視の治療にもなります。
トレーニングや高価な器具を使い、多くの時間やお金を使わなくとも、この点眼薬をさすと毛様体の緊張は解け、本来の屈折状態に戻ります。仮性近視なら視力が改善するわけです。その状態でもなお近視を示しているならば、その眼は真性の近視、つまり軸性近視の状態です。近年、近視の大多数は眼軸が伸びることによって生じる軸性近視であるとの調査結果が出ました。
しかしながら世の中には「近視が治る」とか「視力は回復する」とかの方法が存在します。確かに、ある程度の視力の回復(調節力の改善と呼んだほうが正しい)は期待出来る場合がありますが、すべての近視を「治す」わけではありませんのでご注意ください。
アイトレーニングというのも、毛様体筋も筋肉だから鍛えることができる、ということでしょうが、残念ながらやはり仮性近視以外には効果は期待できません。ちなみに、このトレーニングによる視力回復法のよりどころになっているのは、昭和15年に眼科医が唱えた「近業(テレビや読書)を長時間続けると、眼のまわりにある外眼筋が衰え仮性近視になり、さらにこの状態が続くと近視になる。」という仮説に基づいているようです。まだ、眼球の正確な構造が解明されていない時代の仮説ですから、その説は穴だらけです。根本が間違っている以上、それに基づいて作られたプログラムになんの正当性もありません。
どうしても視力を回復させたいという熱意があって、いろいろ試してみるのも良いかとは思います。少なくとも、それをやったせいで悪くなることは無いでしょう。
さて、では視力の矯正(眼鏡やコンタクトレンズ)が必要になるのはどれくらいからでしょうか。教室で黒板の字を読みとるには0.7ぐらいの遠見視力が必要です。また近くを見るためには、教科書の小さなふりがなを読むのに0.7程度の近見視力が必要です。したがって快適な学校生活には、少なくとも遠近共に0.7ぐらいの視力が必要でしょう。生活に不自由がなければ眼鏡は必要ありませんが、不自由を感じるようになった場合には、まず眼科医の診察を受け、必要と判断されれば眼鏡を作るようにしましょう。
日本人会診療所
大西洋一