日 本 人 会 診 療 所

 

手足口病

新聞やテレビに加え、インターネットなどでの情報が氾濫する昨今、病気に対する情報も簡単に手にすることが出きるようになり、あらためて活字で提供する意義は薄れてきました。そこで、一般的な疾病説明だけでなく、もう少し現実的で身近な側面から、私見も交えて、お話しをしていきたいと思います。

今回は、手足口病についてお話しします。

以前にマレーシアなどで手足口病の流行中に、急性脳炎により急死した小児例があることからシンガポールでは手足口病はかなり敏感に扱われています。

手足口病は、経口、飛沫、接触で人から人に感染する、主に幼児に流行するウイルス疾患です。主な病因ウイルスは、エンテロウイルス71ですが、原因となるウイルスは一つではなく、その他のウイルスによっても同様の症状を呈することがあります。いったん罹患すると感染を受けたウイルスに対する免疫は成立しますが、異なったウイルスの感染を受けて再び同様の症状を現すことはあり、この場合反復して発症しているかのようにみえます。

手足口病は、口腔粘膜および四肢末端に現われる水疱性の発疹を主症状とし、発熱や上気道の症状を伴うこともあります。大部分は発疹のみの軽い疾患であり、特別な治療は必要としません。まれではありますが髄膜炎や心筋炎の合併が見られます。日本でも手足口病の経過中に死亡あるいは重篤な神経症状を合併した症例が複数の医療機関で経験されています。

保健省からの通達では、患者発生の際には医療機関は直ちに報告するよう求められています。そして患者は発症から少なくとも7日間は出席停止にするようにとのことです。

しかしながら基本的にはポピュラーな軽症の疾患であって、重症合併症の発生は稀なことであり、医学的には、手足口病になったすべての患者に厳重な警戒を呼びかける必要はないと思われます。

日本でも、学校保健法では学校伝染病第3類の「その他」として扱われており、出席停止期間等についての明確な規定はありません。主な症状が消失した後も3〜4週間は糞便中にウイルスが排泄されるので、回復した患者も、長期にわたって感染源となり得ます。また、感染しても発症しない患者は、気づかないままウイルスを排泄し続けます。したがって急性期のみの登校登園停止による流行阻止効果はほとんど期待ができません。大部分は軽症疾患であり、合併症について注意がおよんでいれば問題は少ないため、発疹だけの患児に長期の欠席を強いる必要はなく、また現実的ではありません。登校登園については、 流行阻止の目的というよりも、本来は患者本人の状態によって判断すべきでしょう。

以上のことから、医学的に見ると、シンガポールのやり方はいささかやりすぎの気がしますが、社会問題に対する行政の毅然とした態度とその対応の早さにはいつも感心させられます。

さて、登校登園の問題ですが、これだけ社会的要請が強いのですから、1週間程度、水泡が消えるまでの登校登園停止はやむを得ないでしょう。医学的に正しいのは云々というより、「○○ちゃんが学校にきてたからうつされた。」などと言われるのは困りますからね。

 

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大西洋一

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