食事 / 運動について

医師 日暮 真由美

言うは易く、行なうは至難

 私がまだとっても初々しい医学生だった大昔、失明、腎不全で透析導入、心筋梗塞・脳梗塞、壊疽で足切断などといった糖尿病の合併症で全身病気のデパートになった患者さんたちに出会うたび、不思議でした。

 患者さんたちがそんな危機的な状態になっているにもかかわらず、そしてそんな状態になるまでに10年以上も自分の糖尿病がコントロール不良なままなのを自覚しているのにもかかわらず、その時点でもまだ病気の原因となっている長年の生活習慣を改善できない、自己管理がいまだにできていない、ということにものすごい驚きを感じたものです。

 糖尿病の合併症が重篤になるまでには、血糖コントロールが不良な期間が大体5年から10年以上かかりますし、その間は本人も自分は病気ではないと勘違いできるほど元気一杯なのが普通なので、それまでに何とか生活を改善できる十分な時間の余裕があったはずなのですが…。

 その後、糖尿病を含む生活習慣病を自分の専門とするようになり、さらに数え切れない数の、自己管理できない愛すべき糖尿病患者さんたちと出会い、色々教えられることが多々ありました。

 そして、今や私もすっかり中年のおばさん。かつて担当していた糖尿病入院患者さんたちの年齢内にすっかり達してしまい、小腹がすいたと一日に何度も冷蔵庫を開けては何かつまみ、隠れ肥満を自覚しながらもろくな運動もしない、真夜中にビールを楽しみ、日曜日は一日中ごろごろ寝て過ごす等々…そう、自分の生活習慣を変えることの難しさを自ら心底実感するようになってしまったのでした。

 「習慣」と呼ぶくらい自分にしっかりなじんでいるものです。これを変えるのは言うは易く、行うのは実に大変なことなのであります。新聞やテレビでメタボリックシンドロームの文字を見るたびに、自分の専門領域でありながら、あ?やめて?、私を責めないで?と思ってしまいます。

午後のお茶のひととき

アイスカフェラテ低糖Sサイズとカントリー風チョコチップクッキー2枚、計約250Kcal(≒茶碗一杯のごはん)消費するには、水泳平泳ぎ連続約30分か、早歩き約1時間半か、通常歩行で2時間15分!

糖尿病予備軍

 しかし、職業柄、糖尿病を予防するのはわたくしの困難な使命でもあります。現在、日本の糖尿病人口の増加は著しいものがあり、平成14年度に厚労省の行った調査では、日本人の6?7人に1人は糖尿病か糖尿病予備軍であると推計されました。6?7人に1人というと、我が家と、同じコンドに住む日本人家族K家との2家族のうち誰か1人が糖尿病か糖尿病予備軍という計算です。驚くべき頻度ではありませんか。

 ここで、糖尿病予備軍と言うと、「まだ糖尿病になってはいないんでしょ、よかったぁ」と軽く考える方が多いのも予備軍という名称からはもっともなのですが、実は、まったく正常な人と比べると心筋梗塞や脳卒中をおこすリスクが高い人達であることがすでにわかっており、実は深刻な問題となっています。

 しかし、予備軍だからこそ、生活習慣の改善によって正常な健康を取り戻せる可能性が高い人たちでもあり、予備軍の人たちをいかに正真正銘の糖尿病にさせないかというのが、糖尿病医学界の最重要課題の一つでもあるのです。

食後2時間後の血糖測定

 糖尿病は初期のうちには自覚症状はほとんどありませんから、予備軍の人に自覚症状がないのは言わんやおや、自分は健康そのものであると思っている人がほとんどです。また、年に一度の健康診断では大抵朝食抜きの状態で空腹時血糖を測定するので、予備軍の人は正常という結果がしか出ないことも多いのです。

 そこで、さまざまな研究から、糖尿病が発症してくる過程で一番最初に異常が見られるのは食後の血糖であることがつきとめられ、食後血糖を測定することが糖尿病予備軍の診断に最重要であることがわかりました。

 正常の人であれば、ホーカーでどんなにフライドホッケンミーとナシ・ビリヤーニとラクサを大食いしてピーナツアイスカチャンでしめても、血糖は一定の範囲に保たれており、140 mg/dl以上にあがることはありません。

それでは、どんな人が糖尿病予備軍の可能性が高く、食後血糖を測ったほうがいいのでしょうか?目安をあげますと

1.肥満の人 

2.メタボリックシンドロームが疑われる人 

3.尿糖が±の人

4.親・兄弟姉妹等に糖尿病の人がいる人

5.妊娠糖尿病だった人

6.巨大児出産歴のある人 

7.糖尿病に絶対になりたくない人 

8.最近おなかまわりの脂肪が気になってきて自分の生活習慣を見直さなくちゃいかんと思ってはいるが、まあ今現在はそう  大した事にはなっていないだろうからもう少しあとでいいやと、つい先延ばしにしている人(わたくし)等々…

 食後血糖は御本人の通常の食事開始時から2時間後の血糖を採血して測定します。「どんぐり」で刺身てんぷら定食を食べて図書館で週刊誌を読み、2時間後に採血するというのももちろんOK。

 また、より精密な検査としては、朝食前の空腹時に来院していただき、糖液を飲んで頂いて2時間にわたって血糖の推移を見るというブドウ糖負荷試験を受けられるのもおすすめです。採血時間の調整についてあらかじめお伝えしたいことがありますので、来院予定の前日までにお電話で御一報いただければ幸いです。

あ、言い忘れました、最近ビリーズブートキャンプへの入隊を真剣に考え始めている人、あなたもぜひ食後血糖を計った方がよい人のお仲間です!

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●筆者紹介(ひぐらし・まゆみ)

千葉大学医学部・同大学院卒、医学博士

千葉大学附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科所属

糖尿病専門外来診療従事、女性専門外来研究

日本内科学会・日本糖尿病学会・日本腎臓学会・性差医療医学研究会所属

趣味は旅行、読書、高齢出産でできた一人娘の世話

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