食事 / 運動について

医師 日暮 浩実

身長が標準の範囲に達しない子供たちがいます。彼らは肉体的には異常がなく、また、血液検査(IGF-1, GrowthHormone 刺激試験など)でも正常です。身長が同年齢の子達と比べて、標準偏差の2倍より低く、かつ原因が不明な場合特発性小人症(Idiopathic Short Stature)と言われます。ISSの子は子供たち全体の約2.5%とされます。

低身長の原因は以下に示すようにたくさんあります

1.

 遺伝的な成長と成熟の遅れ(思春期になってから急に身長が伸びる人もいます。親がそのような成長型であった場合、現在その子の身長が低くても、将来伸びると期待されます。)

2.

ターナー症候群やプラダービリー症候群などの遺伝病

3.

低栄養

4.

慢性疾患(腎臓病、心臓病や消化管疾患など)

5.

喘息などの治療薬

6.

骨の病気(成長板の障害など)

7.

成長ホルモンやコルチゾール、甲状腺ホルモンなどの不足

それゆえ、ISSの確定には上記のような理由を除かなくてはなりません。

 身長が極端に低いことが、不利に作用することが多いことには様々な報告があります。小児期には仲間はずれにされ、成人してからは子供扱いされる危険が高いです。大人になってからは低身長は社会的経済的にも影響を与えます。低身長の成人は結婚率が低く、また、実際よりも能力が低いと判断されてしまいがちです。

特発性小人症の治療

 ホルモンは腺というからだの小器官から分泌される物質です。ホルモンは血流に乗って標的器官にたどり着きます。成長ホルモン(Growth Hormone)は体の健康に大きな影響を与える重要なホルモンです。あなたの姿、感覚、動きに影響を与えます。

 2003年7月、アメリカのFDAは特発性小人症の子供に遺伝子組み換えヒト成長ホルモンを使うことを認めました。それ以後、多くの臨床試験が実施され、長期の効果と安全性が試されました。これらの検査の結果、遺伝子組み換え成長ホルモン療法は安全であり、特発性小人症の子の最終身長にも効果があることが示されました。治療すると予想より5cmの身長の増加が認められることを証明した研究成果が発表されました。この研究では薬を使わなかった人よりも9cm伸びた人もいました。また別の研究者は38症例のISSの患者さんについて解析し、治療によって身長が4?6cm伸びたと結論しました。投与量を増やし、頻回にしたところ、薬を使わなかった場合より7cmの身長の増加が期待できることが示されました。また、9%の患者さんは正常域に達しました。

成長ホルモン療法を受けている患者さんの共通の悩み事

 成長ホルモン療法を受ける際の最も共通した障壁は、注射自体とそれを毎日行なうことです。しかしながら、技術の進歩により、患者さんのニーズに応じて針なしの注射も可能となりました。薬物動態学的に見て、針つきのものとなんら変わるところはありません。アメリカのFDAは針なしの注射器具(Medi-jector)を成長ホルモン療法の子供や成人に使うことを承認しました。

 日本でも針なしの注射器具(Medi-jector)を使用して成長ホルモン治療を成長ホルモンの分泌不全のお子さんに投与した結果、良好な効果を確認したことが学会で発表されました。

 発表者の結論は、そうした器具を用いたヒト成長ホルモン療法の安全性、効果、投与法には問題はなく、また「注射針が嫌いな子供さんたちにとても有効であり、ヒト成長ホルモン療法の有効な治療選択肢となるであろう」というものでした。

まとめ

 原発性の低身長はおよそ2.5%の子供たちに起こります。自然史的にみれば無治療の原発性低身長のお子さんが成人した時の身長が低いことは確認されています。背が低いことで様々な面で不利益を被っている子供さんや大人がいます。そして治療効果はとてもはっきりしています。多くの臨床試験でも成長ホルモン療法の効果と安全性は示されています。

 子供への成長ホルモン療法は差し控えられるべきではないと考えられます。

Back to Letter from Doctor

この記事に関するご意見、ご感想はFAXまたはE-mailでクリニックまでお寄せ下さい。
FAX 6467-1298 E-mail
clinic@jas.org.sg
ご相談がありましたらクリニックにお越し下さい。

 

●筆者紹介(ひぐらし・ひろみ)

千葉大学医学部卒、日本医師会認定産業医、日本内科学会

日本呼吸器学会、日本結核病学会、日本宇宙航空環境医学会所属