
医師 日暮 浩実
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病原体が肺に入り、そこで“炎症”を起こすというのが肺炎です。“炎症”が起きているところには、体から炎症に関係するたくさんの細胞が集まってきます。またケミカルメディエーターという様々な物質が作用して、肺の毛細血管から、大量の液体(浸出液といいます)がしみでてきて、炎症が起きているところは水浸しの状態になっています。これらの様々な物質や細胞、病原体が含まれた液体が肺のほかの部分にも波及していきます。レントゲンでは白い影となって映ることになります。これが肺炎と呼ばれる状態です。症状としては、発熱、咳や痰がみられます。胸痛や呼吸困難になることもまれではありません。 |
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原因として多いのは、1歳以下のお子さんでは、ウイルス、インフルエンザ菌(毎年冬に流行るインフルエンザウイルスとは別物です)、肺炎球菌、モラクセラ・カタラーリス、マイコプラズマなどです。1?5歳では、マイコプラズマの比率が多くなってきます。5歳以上となりますとマイコプラズマの比率が更に大きくなり、インフルエンザ菌の比率が減ります。インフルエンザ菌(Hib)は乳幼児の髄膜炎の原因としても有名で、シンガポールを含めた諸外国ではワクチンがあります。また、肺炎球菌による髄膜炎も多いことが知られるようになりました。 |
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シンガポール最大の小児科病床のあるKK WomenOs and ChildrenOs Hospitalでは1998年から2004年までで、144名の肺炎球菌により重症の肺炎を引き起こして入院された患者さんのうち9名が死亡しています。死亡率は6%になります。直接の死因は髄膜炎を引き起こしたことによるとされています。後遺症で麻痺が残った患者さんも報告されています。世界全体では5歳以下の小児では肺炎球菌による肺炎のため、年間120万人の死者が出ているといわれます。 また、高齢者にとって肺炎は大敵です。年齢が上がるに従い、肺炎が死に至る確率は急激に増大します。日本での統計によりますと、15?30歳まではほぼ変わらず、10万人当たり0.5人の死亡ですが、この年齢層を基準にしますと、30代後半で約3倍、40代後半では10倍、50代後半では30倍、60代後半では130倍、70代後半では700倍となります。高齢者の肺炎は、昔と比べてもあまり減っていません。結果、日本では、肺炎は全死亡原因の4位になっています。高齢者の肺炎の約半数は、肺炎球菌によるものであるとされています。様々な抗生物質が作られたことにより、現在では多くのばい菌を撃退することが出来るようになりましたが、重症化してしまうと、いくら効き目の優れた抗生物質を使っても回復できないことが多いのです。そこで大切なのは予防です。 |
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高齢者に対しては、肺炎球菌に対する予防接種が実施され、アメリカでは高齢者の半数は既にこのワクチンを受けて大きな効果を上げています。日本でも近年接種者が増えてきました。小児に対しても予防したいところだったのですが、従来の肺炎球菌ワクチンは2歳以下の小児には適応がありませんでした。 しかし、昨年10月、生後6週から接種可能な新しい肺炎球菌ワクチンがシンガポールにも導入されました。5歳以下では、統計上、肺炎球菌は肺炎の原因の10%程度とされていますが、原因菌を決定できない例も多いので、実際にはもっと多いかも知れません。この割合は、インフルエンザ菌(Hib)に次いで多いものです。 外来でお会いする患者さんの40%近くが呼吸器感染症です。普通の風邪の方が多いですが、肺炎の方も時々見受けられます。肺炎の予防として、肺炎球菌ワクチンを選択肢のひとつに加えられてみてはいかがでしょうか。 |
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千葉大学医学部卒、日本医師会認定産業医、日本内科学会
日本呼吸器学会、日本結核病学会、日本宇宙航空環境医学会所属