食事 / 運動について

医師 日暮 浩実

 風邪は誰もが年に一度や二度はかかる病気です。鼻やのど、気管などに炎症を起こし、咳や痰、鼻汁、咽頭痛などの症状が見られる状態を医学的には風邪症候群と呼 びます。

今回は風邪について考えてみましょう。

1.原因はウイルス

 風邪は上気道(鼻やのど)の細胞に病原性のある物質が入り込むこと(感染)によって引き起こされます。この病原性物質のほとんどはnm(ナノメートル)単位の大きさしかない生命体で、ウイルスと呼ばれるものなのです。昨今、ハイテク分野でナノテクノロジーがもてはやされていますが、身近な風邪のウイルスたちはこのナノの世界の住人だったのです。ちなみに1ナノメートルは10億分の1メートル、1ミリの100万分の1の長さのことです。

 ウイルスは遺伝子とタンパク、それを取り囲む膜などだけからなる簡単な構造をしており、それ自身では増殖することはできず、必ず他の細胞に寄生して、その細胞の持っている増殖装置に勝手に命令を出して、自分のコピーを作るフトドキモノです。そして利用させていただいた細胞にお礼をするどころか、多大なダメージを与えます。さらに、増えた仲間のウイルス(自分の分身)と一緒に次の細胞に取り付いてまた、さらに“分身”を増やすという飽くなき欲望をもっている困ったやつらなのです。「ホリエモンは土足で他人のうちに上がりこんだ」と揶揄されていますが、そのうちとは仲良くしようという人間らしさを持っているのに、こいつらはウイルスだけにそんな思いやりはありゃしません。完全自己中です。ちなみにインフルエンザウイルスの場合、ひとつのウイルスから100個の“分身”ができます。このサイクルが8時間です。これが3サイクルつまり24時間たつと1個が実に100万個になるのです。(臨床的にはこの辺で急に発熱が始まるのですね)実をいうと、インフルエンザウイルス増殖の温床に期せずしてなってしまった細胞君たちは責任をとらされ(?)集まってきた生体自身の免疫細胞に食われてしまうのです。「裏切り者には死を(?)」ということなのでしょうか?いいえ、こうした傷ついた細胞を取り除き新たな細胞にとって変えることで生体は自分を正常な状態に戻そうとしているのです。こうした生体の免疫反応が起こると腫れて痛みが出るということになります。のどで起きればのどが赤くなって痛いということになります。

2.風邪のウイルス

 風邪の原因となるウイルスは名前を列挙してみますと

・インフルエンザウイルス

・パラインフルエンザウイルス

・RSウイルス

・ライノウイルス

・コロナウイルス

・アデノウイルス

・エンテロウイルス

・ロタウイルス

・コクサッキーウイルス、その他

 などがありそれぞれに亜型、血清型などがあって全部で数100種類以上に上ります。この中で例えばライノウイルスは鼻かぜの50%、コロナウイルスは15%を占めるとする報告があります。先ごろ世界を震撼させたSARSのウイルスもコロナウイルスというごくありふれたウイルスの仲間だったのです。

3.治療

 風邪の原因治療(原因ウイルスを直接殺すこと)はありません。インフルエンザの薬でさえ、詳細は省きますが、実は、直接インフルエンザウイルスを殺しているわけではないのです。(ただの症状緩和でもなく、増殖抑制と言ったら近いでしょうか、良く効きます)じゃあ、どうして風邪は治るのでしょう?実は、皆さんがご自身で治しているのです。体の中に病原体などの自分自身とは違う物質が侵入すると、免疫機能が働き、感染した細胞を丸ごと分解したり、また抗体という武器を作って病原体を攻撃します。ただ、こうした一連の免疫反応が働くまでには数日から1週間かかるので、風邪が治りきるまでには時間がかかるのです。

 薬は、それまでの間、症状を和らげるためのものなのです。症状を緩和することで、苦痛を和らげ、体力を維持し、ひいては二次感染の確率も減らせるのではないかと思います。また、中には細菌感染を併発していることもあり、その場合には抗生剤を処方いたします。風邪だと思われたらどうぞ気軽に来院してくださいね。

Back to Letter from Doctor

この記事に関するご意見、ご感想はFAXまたはE-mailでクリニックまでお寄せ下さい。
FAX 6467-1298 E-mail
clinic@jas.org.sg
ご相談がありましたらクリニックにお越し下さい。

 

●筆者紹介(ひぐらし・ひろみ)

千葉大学医学部卒、日本医師会認定産業医、日本内科学会

日本呼吸器学会、日本結核病学会、日本宇宙航空環境医学会所属