
医師 日暮 浩実
|
肺気腫という病気をご存知でしょうか?これは主にタバコが原因で、肺の細かい構造が壊れてしまい、咳、痰、体を動かした時の呼吸困難などの症状が現れる病気です。ひどくなると普通にしていても息苦しさを感じます。日本には潜在的に500万人ぐらいこの病気にかかっている人がいるといわれています。ただ、多くの方は自覚症状がまったくないか、軽いため、医者にかかってはいません。医者にかかっている方は5%程度にすぎません。それでは、放っておいてもいいのではと思うかもしれません。ところがそうはいかないのです。この病気の90%以上の原因はタバコです。かなり進行してからでないと症状はありません。自覚症状のほとんどない方は、そのため、タバコを吸い続けるということになってしまうのです。そして、徐々に病気が進行し、60歳を過ぎてから、はっきりした症状が現れてきます。最初は、坂道や階段で息切れを感じるようになります。年のせいかなと思っているうちに徐々に息苦しくなり、医者にかかることになります。しかし、この時になってタバコをやめても時既に遅しなのです。 |
|
平均的には肺の機能は25~30歳ぐらいが人生で頂点です。それから、年齢とともに徐々に機能は落ちていきます。年に30ミリリットルくらい、30年後の60歳になる頃には1リットルに相当する分くらい機能としては落ちます。タバコを吸うと、この落ち方が2倍以上になってしまうのです。計算すると30年で2リットル分、もともと4リットルだった人は、機能が半分になってしまうということです。逆に計算すれば、1リットルが30年に当たるわけですから、2リットルは60年、つまり、(30 + 60=90)で年齢は60歳ですが、肺だけ先に年をとり90歳になってしまうのです。実際には肺が縮むわけではなく、肺が伸びきったような状態になってしまうのです。レントゲンで見ると肺はむしろ大きく膨らんでいます(過膨張)。それは新しいゴムと古くなってしまったゴムに例えられます。新しいゴムは伸縮自在ですが、古くなると弾力がなくなってゴムとしての機能が失われてきてしまいます。肺でもタバコにより同じようなことが起きるのです。 |
|
失われた肺機能は再生しません。ですから、タバコはできるだけ早くやめたほうが良いのです。肺はもともと余力の大きい器官です。例えば病気で片方の肺を切除しても、若い方ならば息苦しさを感じません。このため、症状がなかなか出ないことになるのです。 タバコを吸われている方は、一度、肺機能検査をされてみたらいかがでしょうか?当クリニックで検査を行なえます。 この病気の治療は、空気の通り道を広げる薬、咳止めや痰の薬を飲むなどの他、酸素を吸うといった対症療法が中心です。また、伸びきった肺の一部を切除するという手術もありますが根本治療ではありません。根本治療は唯一、肺移植ですが、提供できる肺の数はごく僅かなため、適応は限られています。 今回は深くは触れませんでしたが、タバコにより引き起こされてくる病気は、肺気腫だけでなく他にもたくさんあります。 |
| 将来、お孫さんと元気に遊ぶ楽しみをとっておくためにも、タバコはできるだけ早くやめ、肺気腫にならないようにして人生を楽しみましょう。 |
この記事に関するご意見、ご感想はFAXまたはE-mailでクリニックまでお寄せ下さい。
FAX 6467-1298 E-mail
clinic@jas.org.sg
ご相談がありましたらクリニックにお越し下さい。
千葉大学医学部卒、日本医師会認定産業医、日本内科学会
日本呼吸器学会、日本結核病学会、日本宇宙航空環境医学会所属